〇「……」ぼっー
絵梨花「〇〇?またここにいたのね?」
〇「……」ぼっー
絵梨花「行こう?」
〇〇の手を引いて、ベンチから立ち上がらせて
歩き出して、家に帰る。
〜〜〜〜〜
絵梨花「〇〇?ここに座って?」
ソファーに座ることを促す。
座るのを確認すると
絵梨花「お茶入れるね?」
キッチンに向かいお茶を入れて、リビングに戻り〇〇にお茶を出す。
絵梨花「はい、どうぞ」
〇「……君は誰?」
絵梨花「私は…あなたの友人だよ?」
〇「僕の?」
絵梨花「そう、友達」
〇「でも同じ指輪をしてるよね?」
絵梨花の右手薬指に嵌っている指輪を指差す。
絵梨花「友達同士でもペアアイテム持つでしょ?」
〇「…そっか」
私は生田絵梨花、27歳の元看護師
この人は秋元〇〇、27歳で若年性アルツハイマー
そして、私の恋人…本人は忘れてるけどね
周りからはもう〇〇と別れて、自分の幸せを考えたら?と言われた。
〇〇のご両親からも似たようなことを言われた…
別れるなんて考えられなかった
私の全てを変えてくれたこの人と…
初めて会ったのは24歳の頃
場所は私が勤めている病院だった
〇〇がバイクの衝突事故で搬送されてきた
10:0で相手が悪いらしい
まぁそれは置いておいて、〇〇を担当するのが私になった。
最初こそ普通に接していたけど、〇〇の方から絡んでくるようになって
少しずつ〇〇に惹かれていった。
〇〇が退院することになって、私から告白をした
返事はOKだった。
付き合ってから半年くらいで同棲をして
2年半くらいが経ったある日、〇〇の物忘れが始まった
最初の頃はちょっとしたことだけだったのが、
半年もすると色々な事を忘れてしまった。
最近では私の事も家のことも忘れて、
昔2人でよくいった公園のベンチに座ってることが増えた。
最初こそ、『君は誰?』って質問に
『あなたの恋人よ』って伝えていたけども
最近は『あなたの友人だよ』って伝えている
正直疲れていたのかもしてない
何度忘れても、根気強く伝えていた
でも〇〇は忘れてしまう
イタチごっこに疲れたんだ…
絵梨花「どうしたらいいんだろう」
〜〜〜〜〜
絵梨花「どうしたらいいのかな…」
真夏「いくちゃんはよくしてくれているよ、本当なら私達家族が面倒を見なきゃいけないのに、いくちゃんが面倒を見てくれている」
絵梨花「それは…恋人だから」
真夏「…義務になってない?」
絵梨花「え…」
真夏「勘違いしてほしくないんだけど、〇〇を見るのが恋人としての義務になってない?私は〇〇の恋人だから面倒を見なきゃって」
絵梨花「それは…」
真夏「姉の私が言うのも変だけど、もういいんだよ?ここまで〇〇を愛してくれたことには感謝してる、だけど今のいくちゃんを見てるともう限界だと思うの」
テーブルの上に投げ出された絵梨花の手を包み込むように両手で包み込む。
絵梨花「……」
私は何も言えなかった…
真夏「〇〇は施設に入れるから、いくちゃんはもういいんだよ?」
絵梨花「…少しだけ考えさせて」
真夏「うん」
私はどうしたいんだろう…
〜〜〜〜〜
真夏と会ってから数日後
また〇〇がいなくなった、多分あの公園だろう
このまま迎えに行かなかったら…
絵梨花「っ…なんてことを考えてるの!!」
すぐに〇〇のいる公園に向かう。
絵梨花「はぁはぁ!〇〇!」
〇「誰ですか?」
いつもと同じ…やっぱりダメなのかな…?
〇〇の隣に座る。
絵梨花「私は…」
いつものように友人だと伝えようとしたけど言葉が出ない。
何か言わなきゃいけないのに声が出ずに俯いてしまう
“ふわっ”
そんな時、私の頭を優しく撫でる手が…
〇「大丈夫だよ」
絵梨花「〇…〇…?」
〇「絵梨花は優しいからいっぱい頑張ってくれたね?」
絵梨花「記憶がっ…」
〇「楽になって?今までありがとうね、絵梨花…愛してるよ」
そういうと目を瞑る〇〇…5分くらいするとまた目を開ける。
絵梨花「〇〇っ…」
あぁ…〇〇はこういう人だ…こんな時でも誰かの心配をする。
そうだ、こういう人だから私は惚れたんだ
5分くらいすると〇〇が目覚める。
そしてまた
〇「君は誰?」
絵梨花「私はあなたの恋人だよ!お家に帰ろうか!」
私はもう迷わない、この人が眠る日まで必ず支えるから!
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この作品はフィクションです。
実際の人物・団体・場所とは関係ありません。
またこの作品内の表現や行動はあくまでも、
作品としてなので、実際に行っても、
責任は取りかねますのでご了承ください。


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