雨が降る中、傘も差さずに立ち尽くす人…
誰もいない公園に降る雨はとても
静かで、自分に当たる雨音はとても心地いい。
『何してるの…』
声がした直後、頭上の雨が止む。
〇「雨に打たれていたのに…」
『ばかっ、風邪ひくでしょうが』
〇「君は口が悪いなぁ…」
『あなたがこんなことしなければ悪くならないわよ』
そういうとそっと背中に触れる。
『もう…体が冷え切ってるじゃない…』
〇「そう?」
『ほら、家に帰るわよ』
〇「うん…」
私の想い人は何を考えてるかわからない
仕事の時はテキパキと作業するくせに、出世には興味がなく
暇さえあれば空を眺めてる
〇「雨が降っている空が好きなんだ…」
『どうして?』って聞くと
〇「いなくなってしまった恋人が好きだったから…彼女も雨が好きだった…」
“ザザッ…ザーザァ…”
お風呂から上がり、またベランダから外を眺め始める。
私はそんな〇〇の横顔を見つめながらこう思う。
“““亡くなった彼女に囚われている”“”
だって彼は空が好きと言いながら、空を眺めている顔は寂しそうだから…
“ザァーザァ…ザァーザァ…”
今日もまた僕は雨に打たれている
〇「……」
『またここいた…』
〇「“奈々未”はいつも見つけてくれるね…」
奈々未「当たり前でしょ、あなたは私の大切な人なんだから」
〇「…そっか」
少し嬉しそうに微笑んだあと、また空を見上げる。
彼はきっと雨に打たれることで亡くなった恋人を肌で感じてるんだろう…
元恋人は亡くなった後でも心の奥底まで、
〇〇を支配してるんだなって思うと嫉妬してしまう。
〇「奈々未…」
目を瞑り、空を見上げながら私の名前を呼ぶ。
奈々未「なに?」
〇「……何でもない」
『何でもない』なんでうそ…
背中から抱きしめる。
〇「濡れるよ?」
奈々未「わかってる…」
濡れている身体を抱きしめると、想像してるよりも冷たく
その冷たさが私の体にも広がる。
少しすると〇〇が立ち上がり、私を見る。
一度目を伏せてから私の目を見つめる瞳には不安と申し訳なさが揺れ動いている
私が『気にしなくていいんだよ』と伝えると
寂しそうに笑うから、そのままになんて出来ずにまた抱きしめる。
〇「今日の奈々未は甘えたさんかな?」
奈々未「ばかっ…」
〇「あはは…帰ろっか」
奈々未「うん…」
お互い濡れたまま傘を差して、帰路に着く。
『奈々未』
奈々未「ん?」
『伝えたいことがあるんだ、だからあの場所にきてほしい』
奈々未「今じゃダメなの?」
『うん、あそこじゃないとダメなんだ』
いつもとは違って、瞳は不安にも申し訳なさにも揺れてはいない。
奈々未「わかった、後でいくね」
『待ってる』
先に家を出る〇〇。
私は出かける準備をして、鍵を掛けて家を出る。
10分くらい歩くと、街を一望できる公園に着く。
ここは〇〇と亡くなった元恋人の思い出の場所
奈々未「お待たせ」
『そんなに待ってないよ』
奈々未「そっか」
『いきなりで悪いけど、僕のわがままを言ってもいい?』
奈々未「わがまま?」
『うん、とても身勝手なわがまま』
奈々未「言って?」
『僕はさ、奈々未とこれからを歩んでいきたい』
奈々未「っ…」
『これまで僕のせいで、奈々未には悲しい思いや、寂しい思いをさせていたと思う…僕が不安な時には必ずそばにいてくれたし、探し出してくれた…そんな優しくて、暖かい君と一緒に生きていきたいんだ…だめかい?』
奈々未「いいに決まってるじゃない!」
私は〇〇に飛び込むように抱きつき、強く強く腕に力を込める。
『これからは僕も奈々未を支えるから』
奈々未「うん、私もこれまで以上に支える」
上を向くと、曇り空が一片の雲もなく晴れて、
そこには青く広大な空が広がっていた。
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この作品はフィクションです。
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責任は取りかねますのでご了承ください。

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